業者は情報公開に消極的なところが多く、ユーザーは浮気調査や家族の家出捜索のような体験を人に話したがらないからです。
しかし、業界情報がないということは、いざ自分が頼まなければなら亡くなった時、とても困るということです。
そこでここにコンパクトにまとめてみました。
業界の概要
開業資格と業者数
探偵業は地元の警察経由で公安委員会に届け出ることが義務付けられており、その届出数は現在5600社(※)を超えています。
しかし、その届出は書類提出であって形式が整っておれば審査はありません。
探偵には国家資格も免許もなく、そのスキルを認証するシステムはないのが現状です。
探偵学校
探偵学校というものはありますが、卒業資格は不要だし、カリキュラムにも業界公認の基準などありません。
探偵を夢見る人に高額な授業料で実践とかけ離れたレベルの低い授業を行なっているに過ぎない場合が大半です。
探偵学校は、本業の調査で十分稼げない探偵社の収入源になっている場合が多いのです。
業界の評判
というわけで、装備やスキルの貧弱な零細個人業者が大半を占め、届出だけして活動実態や実務経験がない会社もたくさんある状態です。
こうした業者の中で悪質なものが、ユーザー側が情報を持っていないのをいいことに、様々な「やらずぼったくり」行為を行って、昔からトラブルが多い世界です。
そのため、「興信所は怖い」というイメージを持つ人も多いですが、それがすべてだと思うのは間違っています。
本物の探偵
本物の探偵は、常人には無理なスキルと耐久力を持ち、依頼者の要望に完全に応えようとするプロフェッショナル、ないしは職人です。
私(本サイトの管理者)は、原一探偵事務所への3回の取材でそれを目の当たりにし、深い感銘を受けました。
問題は、そうした本物のプロが全体に占める比率が低すぎることです。
多数の低レベルないし悪質な業者が、本物の探偵のイメージまで汚しているのが、興信所業界というところです。
大手の実態
業界の中で株式会社などの法人はごく一部、全国展開の大手となると五指に満たないほどです。
その全国展開大手の中にも、地方の支社には相談員だけおいて探偵は配備せず、単なる営業拠点も数に入れている会社があるようです。
全国に100拠点以上と謳っているところもありますが、フランチャイズであって、違う会社が同じ看板を挙げているにすぎません。
ホームページだけの興信所
最も注意すべきは、オフィスを構えていない興信所です。
ホームページでは全国大手や地元の企業に見せかけ、打ち合わせは喫茶店やファミレスでして、実務は他社に丸投げ外注します。
マージンは取りますが責任は取らず、トラブルが発生すると連絡が取れなくなることもあるようです。
住所がわからない相手に、個人情報満載で高額の仕事をまかせることがどんなに危険か、冷静になって考えてみましょう。
業界団体
業界団体の代表は、警察庁が監督する内閣府認可法人・全国調査業協同組合。
仲間の数社で業界団体を作り、さもすごい業界団体に見せかけている場合もあるので、注意しましょう。
興信所業界の歴史
日本で最初にできた興信所は、明治時代の商業興信所と東京興信所です。
この2つは国内の主要な銀行がバックについて、企業の信用調査を目的に作られた政府絡みの企業です。
だから、浮気調査や家出人探しをしてくれる会社ではなく、現在で言うと帝国データバンクや東京商工リサーチのような会社です。
商業興信所と東京興信所は昭和19年に統合されて東亜興信所となり、その後に調査業務をやめて、今は小さなビジネスホテルの運営会社として存続しています。
以上は、「興信所」という名前は同じでも、今日の興信所とはあまり関係のない話だといえます。
明治、あるいは江戸時代以前から、少なくとも当時一般的であった結婚調査(相手の家柄・評判を調べる)を代行する業者はあったのでは?と思うのですが、記録がなくて不明です。
民間で最初に作られた興信所は、明治33年の後藤武夫による帝国興信所です。
大正15年には全国に54の拠点を持つ、国内最大の興信所になっていました。
この会社も企業の信用調査を目的に作られたのですが、その後は個人向けの探偵調査も手掛けるようになったようです。
しかし、1981年に帝国データバンクに社名変更した際に、企業の信用調査一本に絞って個人向け調査をやめ、今日に至っています。
現在、「帝国」の名を冠する興信所は複数ありますが、この歴史ある興信所とは特に関係はないようです。
ベテラン探偵・小原誠さんの著書によると、探偵事務所・探偵社・調査会社といった名称の会社が登場してきたのは、戦後のことのようです。
現代では、興信所と探偵社は同じものと考えて差し支えありません。
その業務内容は、浮気調査・人探し・素行調査などの個人向け調査サービスです。
企業向けの調査サービスもやっているところはほとんどなく、やっていたとしても信用調査ではなくて、採用予定者の素行調査や社員の不正調査などです。